いさをある人を教のおやにしておほしたてなむやまとなでしこ
世の中には立派な功績を挙げた人がある。
日本の子供たちよ、たとえ生みの親に学ぶことができない場合でも、そうした人を教えの親と思い、志を立てるとよい。
思うこと選ぶことをその人に倣えば、きっと立派な道を歩むことができるだろう。
池のおもにのぞめる花のうれしきはちりても水に浮かぶなりけり
その昔、ヤマトタケルが船で遠征に赴いたとき、弟橘比売命が入水して荒れていた海を鎮めたことがある。
おかげで国は豊かで平和になり、姫の清らかな志は美しく語り継がれた。
国を命がけで守ろうとする志は、男にも女にもある。
その志はたとえ命が散っても水に浮かぶ花のように、いつまでもいつまでも美しく残るものである。
いけのおもは月にゆづりて芦の葉のしげみがくれにゆく蛍かな
湖面に月が明るく輝いている。
そっと芦の茂みに身を隠す蛍は、月を敬い遠慮しているかのようだ。
大きな功績を成し遂げた人ももちろん素晴らしいが、この蛍たちのように、小さくともかけがえのない功績を上げながら、人知れず姿を隠して行った人々があり、その美しさに心を打たれるものである。
いさゝかのきずなき玉もともすればちりに光を失ひにけり
美しく磨き抜かれ、少しの傷もない完璧な大和魂も、塵が被ればあっというまに光を失ってしまう。
細かな塵は次から次へと立つものだが、常に磨いていれば玉が曇ることはない。
常に悪い情報に気を付けて、そして、心を磨く手段を断つことなく過ごしなさい。
いちはやく進まむよりも怠るなまなびの道にたてるわらはべ
学ぶ子供たちよ、学問は日々積み重ねて成就するものであるから、
次へ次へと新しいことを学ぼうとするよりも、間違って記憶していないかどうか繰り返し鍛錬しなさい。
一度見たり聞いたりしただけでは、正しい理解が得られていないことが多いものであるから、
同じように見えても何度も学ぶことで、深く正しい理解が得られるものである。
意訳:Caloa Takao