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明治天皇御製
臼井霊気療法学会「霊気療法必携」掲載125首


秋の夜の月は昔にかはらねど世になき人の多くなりぬる(月)
あさみどり澄みわたりたる大空の広きをおのが心ともがな(天)
暑しともいはれざりけりにえかへる水田にたてるしづを思へば(をりにふれて)
あまたたびしぐれて染めしもみじ葉をただひと風のちらしけるかな(落葉風)
雨だりに窪める石を見ても知れかたき業とて思ひすてめや(をりにふれて)
天を恨み人をとがむることもあらじわがあやまちを思ひかへさば(をりにふれて)
あやまたむこともこそあれ世の中はあまりに物を思ひすぐさば(をりにふれて)
あやまちを諌めかはして親しむがまことの友のこゝろなるらむ(友)
あらし吹く世にも動くな人ごころいはほに根ざす松のごとくに(巌上松)
荒るゝかと見ればなぎゆく海原の波こそ人の世に似たりけれ(波)
家富みてあかぬことなき身なりとも人のつとめにおこたるなゆめ(をりにふれて)
家の風ふきそはむ世もみゆるかなつらなる枝の茂りあひつゝ(兄弟)
いかならむことある時もうつせみの人の心よゆたかならなむ(心)
いく薬もとめむよりも常に身のやしなひ草をつめよとぞおもふ(薬)
いくさ人いかなる野辺にあかすらむ蚊の声しげくなれる夜ごろを(をりにふれて)
いさをある人を教のおやにしておほしたてなむやまとなでしこ(教育)
池のおもにのぞめる花のうれしきはちりても水に浮かぶなりけり(水上落花)
いけのおもは月にゆづりて芦の葉のしげみがくれにゆく蛍かな(月前蛍 )
いさゝかのきずなき玉もともすればちりに光を失ひにけり(玉)
いちはやく進まむよりも怠るなまなびの道にたてるわらはべ(をりにふれて)
いとまなき世にたつともたらちねの親につかふる道な忘れそ(孝)
いぶせしと思ふなかにもえらびなば薬とならむ草もあるべし(草)
今はとて学のみちにおこたるなゆるしの文をえたるわらはべ(卒業生)
色々に咲きかはりけりおなじ種まきて育てし撫子の花(麦)
岩がねにせかれざりせば滝つ瀬の水のひびきも世にはきこえじ(滝)
器にはしたがひながらいはがねもとほすは水のちからなりけれ(水)
うとましと思ふむぐらはひろごりて植ゑてし草の根はたえにけり(草)
うまごにやたすけられつゝいでつらむわれを迎へてたてる老人(翁)
うもれ木をみるにつけても思ふかなしづめるまゝの人もありやと(埋木)
埋火のもとにいざなへふる雪のはれまもまたできたる老人(雪中人来)
うるはしくかきもかゝずも文字はただ読みやすくこそあらまほしけれ(書)
老の坂こえぬる子をもをさなしと思ふや親のこゝろなるらむ(親)
老人を家にのこしていくさびと国のためにと出づるをゝしさ(をりにふれて)
大空を心のまゝにとぶ鳥もやどるねぐらは忘れざるらむ(鳥)
幼児がもの書く跡をみても知れ習へばならふしるしある世を(手習)
をしへある庭にさきたる撫子の花は露にもみだりざりけり(瞿麦露)
鬼神もなかするものは世の中の人のこゝろのまことなりけり(誠)
おのがじしつとめを終へし後にこそ花のかげにはたつべかりけれ(をりにふれて)
おのが身はかへりみずしてともすれば人のうへのみいふ世なりけり(述懐)
おほぞらにそびえて見ゆるたかねにも登ればのほる道はありけり(峯)
おもふこと思ひ定めて後にこそ人にはかくといふべかりけれ(をりにふれて)
おもふこと思ふがまゝになれりとも身を慎まむことな忘れそ(をりにふれて)
及ばざる事な思ひそうつせみのみはほどほどのありけるものを(をりにふれて)
おりたちてとくうちはらへ枝よわき小松のうへに雪のつもれる(雪中松)
かぎりなき世にのこさむと国の為たふれし人の名をぞとどむる(をりにふれて)
かざぐるまいざかけさせよ日ざかりの暑さいとはず人のまゐくる(扇風器)
かざらむと思はざりせばなかなかにうるはしからむ人のこゝろは(心)
かたしとて思ひたゆまばなにこともなることあらじ人の世の中(述懐)
かりそめの事に心をうごかすな家の柱とたてらるゝ身は(柱)
かりそめの言の葉草もともすればものの根ざしとなる世なりけり(寄草述懐)
川舟のくだるはやすき世なりとて棹に心をゆるさざらなむ(寄船述懐)
きずなきはすくなかりけり世の中にもてはやさるゝ玉といへども(寄玉述懐)
草まくら旅にいでては思ふかな民のなりはひさまたげむかと(旅中情)
国のためあだなす仇はくだくともいつくしむべき事な忘れそ(仁)
国のためながかれと思ふ老人に死なぬ薬をさづけてしがな(薬)
くりかへす昔がたりにおのづからいさめことばのまじる老人(老人)
暮れぬべくなりていよいよ惜しむかななすことなくて過ぎし一日を(夕)
子を思ふ焼野のきじははるの夜のゆめもやすくは結ばさるらむ(親心)
こころある人のいさめの言の葉は病なき身の薬なりけり(薬)
ことしげき世にふる人もわがこのむ道にわけいるひまはありけり(をりにふれて)
事繁き世にも似たるか夏草は払ふあとよりおひ茂りつゝ(夏草)
ことなしとゆるぶ心はなかなかに仇あるよりもあやふかりけり(心)
小山田の湖畔のほそ道細けれどゆづりあひてぞしづは通へる(細径)
こらは皆軍のにはにいではてゝ翁やひとり山田もるらむ(田家翁)
さしのぼる朝日のごとくさわやかにもたまほしきは心なりけり(日)
梅雨にたゝみの上もしめれるをたむろのうちぞ思ひやらるゝ(梅雨)
さゆる夜の嵐のおとに夢さめてしづがふせやを思ひやるかな(寒夜述懐)
しら玉を光なしともおもふかな磨きたらざることを忘れて(玉)
進むありおくるゝもあり時はかるうつはの針もまちまちにして(時計)
すゝむにはよし早くともあやうしと思ふ道には入らずもあらなむ(道)
すゝむべき時をはかりて進まずば危き道にいりもこそすれ(をりにふれて)
すなほなるをさな心をいつとなく忘れはつるが惜しくもあるかな(心)
すなほにもおほしたてなむいづれにもかたぶきやすき庭のわか竹(子)
たかゝらぬ松のこのまにさきながら雲かとみゆる山桜かな(花以雲)
たちつづく市の家居は暑からむ風の吹入る窓せばくして(夏住居)
たらちねの親につかへてまめなるが人のまことの始なりけり(孝)
たらちねの親の心は誰もみな年ふるまゝにおもい知るらむ(親心)
たらちねのにはの教はせばけれどひろき世にたつもとゐとぞなる(庭訓)
散りやすきうらみはいはじいく春もかわらでにほへ山ざくら花(対花言志)
つもりなば払ふ方たくなりぬべし塵ばかりなる事とおもへど(塵)
手ならひをものうきことに思ひつるをさな心を今くゆるかな(手習)
照るにつけくもるにつけて思ふかなわが民草のうへはいかにと(述懐)
遠くとも人の行くべき道ゆかば危き事はあらじとぞ思ふ(道)
歳月は射る矢のごとし物はみなすみやかにこそなすべかりけれ(をりにふれて)
とる棹にこゝろ長くもこぎよせむ蘆間の小舟さはりありとも(蘆間舟)
なかばにてやすらふことのなくもがな学の道のわけがたしとて(道)
なすことのなくて終らば世に長きよはひをたもつかひやなからむ(をりにふれて)
なにごとも思ふがまゝにならざるがかへりて人の身の為にこそ(人)
波風のしづかなる日もふなびとはかぢにこゝろを許さざらなむ(心)
ならび行く人にはよしやおくるともただしき道をふみなたがへそ(道)
払はずば思はぬかたにかたぶかむつゆおきあまるなでしこの花(をりにふれて)
人みなのえらびしうへにえらびたる玉にもきずのある世なりけり(玉)
ひとりたつ身となりし子を幼なしとおもふや親のこゝろなるらむ(親心)
ひとりたつ身になりぬともおほしたてし親の恵をわすれざらなむ(親)
ひらかずばいかで光のあらはれむこがね花さく山はありとも(鉱山)
開けゆく道にいでてもこゝろせよつまづく事のある世なりけり(をりにふれて)
ひろき世にたつべき人は数ならぬことに心をくだかざらなむ(述懐)
ひろき世にまじりながらともすれば狭くなりゆくひとごころかな(心)
ほどほどにたつべき道もあるものを老いにけりとて身をばかこちそ(老人)
槇ばしらたち栄ゆるもうごきなき家のあるじのあればなりけり(家主)
まつりごとただしき国といはれなむ百のつかさよちから尽して(述懐)
学びえて道のはかせとなる人もをしへのおやの恵わするな(師)
みな人の見るにいぶみに世の中のあとなしごとはかかずもあらなむ(新聞紙)
みなもとは清くすめるを濁江におちいる水のをしくもあるかな(水)
身にあまる重荷車をひきながらいそがぬ牛はつまづかずして(牛)
目に見えぬ神にむかひてはぢざるは人の心のまことなりけり(神祇)
ものごとに進まずとのみ思ふかな身のおこたりはかへりみずして(をりにふれて)
もろともにたすけかはしてむつびあふ友ぞ世にたつ力なるべき(友)
やしないてなほも齢をたもたせむ庭に千代ふる松のひともと(老松)
山田もるしづが心はやすからじ種おろすより刈りあぐるまで(農夫)
ゆきにたへ嵐にたへし後にこそ松のくらゐも高く見えけれ(松)
よきをとりあしきをすてゝ外国におとらぬ国となすよしもがな(国)
世に広くしらるゝまゝに人みなのつゝしむべきはおのが身にして(をりにふれて)
世のさまはいかがあらむとかたつぶりをりをり家をいでて見るらむ(蝸牛)
世の中に危きことはなかるべし正しき道をふみたがへずば(道)
世の中にひとりたつまでをさめえし業こそ人のたからなりけり(宝)
世の中の風にこゝろをさわがすなまなびの窓にこもるわらはべ(学生)
世の中の人におくれをとりぬべしすゝまむときに進まざりせば(をりにふれて)
世の中の人の司となる人の身のおこなひよただしからなむ(行)
世の人ををしふる事もかたからむ身のおこなひの正しからずば(行)


関連リンク:

枕詞の意味とその起源