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建物や庭木に巻き付いて嫌われてしまうつる性植物、ヤブガラシ。沖縄でもサトウキビに巻き付いて困っているとか。この植物の対処法も検索してみるとお粗末なものばかりで、果てには宗教じみたものまであり、少々心配になるところです。

ヤブガラシは除草剤が大好物

この植物はとても賢い習性を持っています。自他を見分けて巻き付くものを判別し、光の色を見分けて日向と日陰の区別を行います。固くphが偏りやすい土を好み、柔らかくphが中性へ自動調整される土には近寄りません。
これは「他の植物が繁殖しやすいかどうか」を選んでいると言えます。木陰が多い所には、光合成が高いところで行われるため下草が生えにくい環境となっています。ヤブガラシは意外と弱い植物で、競争相手となる植物がいない環境を選んでいるのではないでしょうか。そうでなければ、ここまで賢くなる理由がありません。

このヤブガラシを撃退するのに、除草剤(非選択式)は全く逆効果です。なぜなら他の植物が生えにくくなった環境には、喜んで足を延ばすのが彼らだからです。撒けば撒くほど、地中はヤブガラシの大好きな環境になって行きます。

ヤブガラシは繁茂した位置を記憶する

この賢い植物に私は興味を示し、長期的な実験を行っています。
これまで分かったことは、「繁茂できた場所に根を残し、翌年もまた同じ場所から生える」性質があるということです。すべての場所で出来なかった場合はすべての場所から生え、一方で摘み一方で繁茂させ花を咲かせると、繁茂できた場所を覚えて再び生えるようになったのです。これは日向であっても、巻き付くもの(支柱)があればゆっくりですが茂って行きました。
考えてみれば当然のことで、養分を蓄える根が近いほうが生えやすく、花実を咲かせればエネルギーを使うため、遠い根の養分を回収せねばならないということです。

つまりヤブカラシの撃退法は、「好ましい場所に誘導する」のが正解であると考えられます。

ヤブガラシは守り神を招く

ところで、ヤブガラシの花はスズメバチの餌となることでも知られています。このことからヤブガラシを駆除しようとする人がいますが、蜂をむやみに恐れるのは良くありません。日本の神々は蜂も蛇も家に迎えて上手に共存してきました。

  • 庭木や建物で下草のない日陰ができる
  • ヤブガラシが繁茂する
  • ハチが巣を作る
  • ハチを食べるスズメバチが巣を作る
  • スズメバチが毛虫(ゴキブリ等も)を捕食する
  • 庭木や家が守られる

何年かに一度大繁殖すると言われるチャドクガの幼虫は、洗濯物などに取り付いて残った毒針ですら人を指す被害をもたらします。また、毛虫や芋虫によって庭木や花、野菜などが食害を受けることも多々あります。こうした被害は蜂に刺されるよりも遥かに回避に難しいものです。
蜂とともに暮らすことで、こうした虫が減り被害が減るだけでなく、死角になりやすいところにヤブガラシを誘導して蜂の巣を作らせることで、望まぬ侵入者を撃退する天然の警備員として使うこともできるのです。

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